
こんにちは。幻想イラストレーターの小林けいこです。
突然ですが、夜空に輝く満月には、それぞれロマンチックな名前があるのをご存じですか?
アメリカ先住民たちは、自然の変化を知るために各月の満月に名前をつけました。それぞれの呼び名には、その季節ならではの風景や文化が映し出されています。
今回は、12の満月の呼び名と由来についてご紹介します。
満月に名前をつけた理由
満月に名前がつけられたのは、アメリカ先住民が季節の移り変わりを把握するためでした。彼らは月の満ち欠けを基準に暮らし、満月ごとに名前をつけることで、狩猟や農作業の目安にしていました。
ただし、「ネイティブ・アメリカン」という言葉は総称であり、実際には多くの異なる部族が存在します。彼らが暮らしていた地域の気候や自然環境はさまざまで、満月の名前も部族ごとに異なっていたといわれています。例えば、寒冷な地域では冬の厳しさを表す名前がつけられ、温暖な地域では植物の成長や収穫に関する名前が多かったようです。
満月の名前

1月の満月は「ウルフムーン(Wolf Moon)」と呼ばれます。この名前は、狼たちの繁殖期が始まる時期に由来しています。冬の静寂の中、仲間を見つけるために遠吠えをする声が、いつもより響き渡る季節。このことから、1月の満月には「ウルフムーン」という名がつけられたといわれています。

2月の満月は「スノームーン(Snow Moon)」と呼ばれます。この名前は、地域や気候によって異なりますが、アメリカでは一年の中で最も雪が多い時期のひとつが2月であったことに由来しています。深い雪に覆われる厳しい冬を象徴する満月として名付けられました。
また、冬の寒さが厳しく、穀物が取れにくくなることから「ハンガームーン(飢餓月)」と呼ばれることもあります。

3月の満月は「ワームムーン(Worm Moon)」と呼ばれます。この名前は、春の訪れとともに土壌が温まり、冬の眠りから覚めた幼虫たちが地上に姿を現すことに由来しています。
幼虫は、冬眠から目覚めたクマやスカンク、鳥などの動物たちにとって貴重な食料となり、さらにその排泄物は土壌を豊かにする役割を果たします。長く厳しい冬を越え、生命が再び活発になる季節の象徴として、3月の満月は「ワームムーン」と名付けられました。

4月の満月は「ピンクムーン(Pink Moon)」と呼ばれます。ただし、月がピンク色に見えるわけではありません。この名前の由来は、春に咲くフロックス(Phlox)という花の色にちなんでいると言われています。
フロックスは北アメリカを主な原産地とするハナシノブ科の多年草で、小さな花が集まって大きな花房を作るのが特徴です。ピンクや紅色、白色などさまざまな色の花を咲かせる種類があり、その中にはキキョウナデシコやシバザクラといった品種も含まれます。春の訪れとともに咲き誇るフロックスの花の色にちなんで、4月の満月は「ピンクムーン」と名付けられました。

5月の満月は「フラワームーン(フラワームーン)」と呼ばれます。 この名前の由来は、春が乗り越え、多くの花が咲き誇る季節であることにあります。

6月の満月は「ストロベリームーン(Strawberry Moon)」と呼ばれます。この名前は、月が赤く見えるからではなく、6月にイチゴの収穫が行われることに由来しています。初夏の訪れとともに旬を迎える甘酸っぱいイチゴ。その実りの季節を象徴するように、6月の満月は「ストロベリームーン」と名付けられました。

7月の満月は「バックムーン(Buck Moon)」と呼ばれます。「Buck」はオスの鹿を意味し、この時期はオス鹿の角が生え替わる季節にあたります。こうした自然の変化にちなんで、7月の満月は「バックムーン」と名付けられました。

8月の満月は「スタージョンムーン(Sturgeon Moon)」と呼ばれます。「Sturgeon」は英語でチョウザメを意味しますが、名前に「サメ」とついていても、実際にはサメの仲間ではありません。チョウザメは、世界三大珍味のひとつであるキャビア(卵)を生むことで知られる魚です。かつて北アメリカの五大湖周辺では、8月にチョウザメ漁が最盛期を迎えていました。そのため、この時期の満月は「スタージョンムーン」と名付けられました。

9月の満月は「ハーベストムーン(Harvest Moon)」と呼ばれます。北アメリカでは、9月の秋分のころが農作物の収穫期にあたり、人々はこの満月を目安に収穫を行ってきました。
実は「ハーベストムーン」には特別な条件があります。これは単に9月の満月を指すのではなく、「秋分に最も近い満月」のことを指します。そのため、年によっては10月の満月がハーベストムーンとなることもあるのです。
また、9月の満月には他にも名前があり、収穫の時期にちなんで「コーンムーン(Corn Moon/とうもろこしの月)」や「バーレームーン(Barley Moon/大麦の月)」と呼ばれることもあります。

10月の満月は「ハンターズムーン(Hunter’s Moon)」と呼ばれます。アメリカの先住民にとって、10月は長い冬に備えて狩猟を始める大切な時期でした。
この時期の野生動物は、夏の間に十分なエサを食べて肥えており、狩猟に適した状態になります。また、動物たちも冬を越すためにエサを求めて活発に動き回るため、狩人にとっては獲物を見つけやすい時期でもありました。
先住民たちは、狩猟の目安としてこの満月を「ハンターズムーン」と名づけ、冬を迎える準備をしていたのです。

11月の満月は「ビーバームーン(Beaver Moon)」と呼ばれます。この名前の由来には諸説ありますが、大きく二つの説が伝えられています。
一つは、ビーバーが冬に備えて巣作りを始める時期であることに由来する説です。もう一つは、毛皮を目的にビーバーを捕獲するための罠が仕掛けられる時期でもありました。こうした理由から、11月の満月は「ビーバームーン」と名づけられたといわれています。

12月の満月は「コールドムーン(Cold Moon)」と呼ばれます。その名の通り、「Cold」には「冷たい」「寒い」という意味があります。
一年のうちで最も寒さが厳しくなる12月。この時期の満月は、冬の訪れを象徴するものとして「コールドムーン」と名づけられました。この名称は、先住民族モホーク族によって呼ばれていたとされています。
▼12月の満月の別の呼び方
呼び名 | 意味・由来・呼んでいた部族 |
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ロングナイトムーン (Long Night Moon/長い夜の月) | 夜が長い季節であることから 【モヒカン族(マヒカン族)】 |
まとめ
一年を通して満月にはそれぞれ特別な名前があり、季節の移り変わりや自然の営みと深く結びついています。これらの名称は、農業や狩猟の目安として使っていたものですが、現在でも季節を感じる美しい呼び名として親しまれています。
月の名前に込められた意味を知ることで、夜空を見上げる楽しみがより深まるかもしれません。次の満月には、その名前の由来を思い浮かべながら眺めてみてはいかがでしょうか。

