【童話の裏側 #2】眠れる森の美女は1つじゃない?3つの原作とディズニー映画の違い

ディズニー映画や、子どものころに読んだ絵本でおなじみの「眠れる森の美女」。
けれど実は、このお話にはいくつもの“原作”があることをご存じですか?

ヨーロッパの古い民話がもとになっていて、時代や国によって少しずつ内容がちがいます。中には、びっくりするような展開の話もあるんです。

この記事では、有名なディズニー映画と比べながら、3つの「眠れる森の美女」の物語を紹介します。私自身も勉強しながらなので、いっしょに楽しんでもらえたら嬉しいです。

ディズニー映画と有名な“茨姫”の元はグリム童話

まず、多くの人が知っているディズニー映画『眠れる森の美女』のベースとなっているのは、ドイツのグリム兄弟による童話『茨姫(いばらひめ)』です。

ざっくりとした流れはこうです。

  • 子どもに恵まれなかった王と王妃のもとに、ある日カエルが現れて「1年以内に女の子が生まれる」と予言。
  • 女の子が生まれ、王と王妃はお祝いの宴を開く。
  • 魔法使いの女たちは13人いるのに、金のお皿が12枚しかなく、1人だけ招かれなかった。
  • 招かれなかった13人目が怒って「15歳になったら紡ぎ車(つむぎぐるま)の針に刺さって死ぬ」と呪いをかける。
  • 12人目の魔法使いが「死なずに100年眠るだけ」と呪いをやわらげる。
  • 王女は15歳で針に刺さり、城全体が深い眠りにつく。
  • 100年後、近くの国の王子が現れ、王女にキスをすると目を覚ます。
  • ふたりはすぐに結婚し、幸せに暮らしました。

ディズニー版では、この流れに音楽や魔法のバトルが加わり、マレフィセントがドラゴンに変身するなど、さらにファンタジックになっていますね。

フランス版・ペローの「眠れる森の美女」はその後が怖い?

17世紀のフランスでは、シャルル・ペローによる「眠れる森の美女」が広まりました。ディズニー映画の元とも言われていますが、少しずつちがう部分があります。

  • 王女が生まれたとき、魔法の仙女が8人いるが、食器が7枚しかなく1人招かれなかった。
  • 王女はやはり針で指を刺して100年眠りにつく。
  • 王子のキスではなく、“100年経ったから自然に目を覚ます”という設定。
  • そしてここからがちょっと怖い…。

実はこのお話には続きがあります。王女は2人の子どもを産みますが、王子の母(お妃さま)は人食いで、王女と子どもを食べようとするのです。

料理人がそれを止めて子羊の肉にすりかえるなど、なかなかショッキングな展開ですが、最後には王子が助けに入り、お妃さまは罰を受けることになります。

イタリアのバジーレ版は大人向け?王女の名前はターリア

さらにさかのぼると、17世紀前半のイタリアにはジャンバッティスタ・バジーレによる『太陽と月とターリア』というお話があります。これは「眠れる森の美女」のもっとも古いバージョンの1つと考えられています。

でも、この話は正直かなりヘビーです。子ども向けというよりは大人向けの物語。

  • 王女の名前は「ターリア」。
  • 占い師が「麻糸が災いをもたらす」と予言。
  • ターリアは糸が指に刺さって眠りにつく。
  • そのまま放置され、王様が偶然やってきて…なんと、眠っている彼女に手を出してしまう。
  • 王はその後帰ってしまい、ターリアは眠ったまま双子を出産。
  • 赤ちゃんが母の指から糸を取り除いたことで、ターリアは目を覚ます。
  • 王の正妻(お妃さま)は嫉妬して、ターリアの子をスープにしようとするが失敗。
  • 最後にはお妃が罰せられ、ターリアと子どもたちが救われる。

このように、イタリア版はかなり現代では物議をかもしそうな内容ですね。

まとめ:眠れる森の美女は“ひとつの話”じゃない

「眠れる森の美女」は、ひとつの決まった物語ではなく、いくつものバージョンがありました。まとめると次のようになります。

バージョン王女の名前魔法使いの人数呪いの内容目覚め方結婚後の話
グリム童話不明13人(1人は招待されず)針に刺さって100年眠る王子のキスすぐに結婚・ハッピーエンド
ペロー不明8人(1人は招待されず)同上時が来て自力で目覚める王妃が人食い、王子が助ける
バジーレターリアなし(占い師登場)麻糸により眠る赤ちゃんが糸を取って目覚める王妃が復讐を企てるが失敗

同じような出だしでも、目覚め方やその後の展開はまったく異なります。

ディズニーの「眠れる森の美女」が好きな方も、ちょっと視点を変えて原作を読み比べてみると、新しい発見があるかもしれません。
これからも、こうしたおとぎ話の裏にあるお話を、いっしょに楽しんでいけたらと思っています。

参考文献・おすすめ書籍

『グリム童話集 赤ずきん・ラプンツェルなど 100年読み継がれる名作』
 著:グリム兄弟/出版社:世界文化社
 ※グリム版「いばら姫(眠れる森の美女)」収録

『眠れる森の美女 ― シャルル・ペロー童話集 ―』
 著:シャルル・ペロー/出版社:新潮文庫
 ※ペロー版「眠れる森の美女」収録

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